最近のの

黒執事 1 (1) (Gファンタジーコミックス)

黒執事 1 (1) (Gファンタジーコミックス)

4巻まで読了。


英国の名門貴族、ファントムハイブ家に仕える執事セバスチャン。容姿・知識・品位・作法・教養、ついでに武道の全てがパーフェクトな彼が今日もお世話するのは、若干12歳の超美貌少年シェル・ファントムハイブ。今日もまた、ファントムハイブ家に新たな客が訪れ…

黒執事というタイトルに、そのイギリス風のデザインの表紙。ページを開くと扉絵に美少年。「坊ちゃん、お目覚めの時間ですよ」の一言から始まる1ページ目にはアーリーモーニングティーだのロイヤル・ドルトンだのウェッジウッドのブルーホワイトだの、違う世界の横文字が並び19世紀の英国情緒たっぷり。続く2ページ目には「花鳥風月百花繚乱拳ーーーーーーーーーーッッ!!」だの「猛虎龍咆万華散裂拳」だのといった漢字が並び少年漫画のバトルロイヤルシーンが続き…ってあれ、この漫画ってそういうものだったのか?


耽美系の香りがするなぁという先入観の元読み始めたが、意外や意外。適度なギャグとシリアスのおかげか話にグイグイと引き込まれる。ギャグの中心は「ダメ使用人のダメッぷり」+「セバスチャンの尋常ならざる優秀(?)さ」のパターンなのだが、出るたびに色々と趣向が変えており楽しめる(少女マンガにはよくある気がする)。バトルシーンも、まぁそれなりのものではあるがこの作品の本質ではないなぁ。セバスチャンの執事的な妙技をもっと見せてくれ。

19世紀英国情緒を楽しめるかと思いきや、日本庭園が出てきたり携帯電話が出てきたりギャングが車を足に使っていたり、と舞台設定は適当。わざとだろうとは思うが…。とにかくキャラクターが出す雰囲気で勝負という感が強いために舞台は、文字通り舞台以上に自己主張をしていない。その辺りを期待するとちょいと肩透かしを味わうかもしれない。

少女マンガだけあり登場人物の服装はまーお洒落でどのキャラクターも耽美的でとにかく美形なこと。眼帯+短パン美少年とかちょいとストレート過ぎないかとも思うが、読んでいるうちに、こりゃ可愛いじゃないかと思い始めて、お約束の女装シーンでページをめくる手が長い間止まっていることに気が付いたあたりで、こりゃ引き返せるうちに引き返したほうがいいなと辛うじて思うことが出来た。の、だが巻末のおまけイラストで止めを刺された。「男性にとっても女性にとっても、究極の美というものは中性的なものになる」という話をどこかで聞いたが、なるほど確かに女装美少年というものはたいていの場合美少女にしか見えなくなるわけであり、そうなると中が男でも女でもどっちでもいいんじゃないか? という至極真っ当な意見に対し「強気な男の子が美少女になるからいいんじゃねぇか!」などとギャップ萌えとか言われるものを朗々と語るのが正しいジェントルメンと思わなくもないが、何か勘違いされそうなのでこれ以上は控えておく。


黒執事」というタイトルに負けない程度の心構えを持つ人ならば、それなりに楽しめるだろうとは思う。

しかしシェルは可愛いな。


65点。

最近の

鉄のラインバレル 1 (チャンピオンREDコミックス)

鉄のラインバレル 1 (チャンピオンREDコミックス)

8巻まで読了。

ロボ+直立不動のキャラクターという構図で毎巻の表紙を飾り、line(直線)という単語をタイトルに掲げるこの漫画、内容も驚くほどまっすぐなロボットもの。

ある日無力な少年が謎のロボットに出会い…というお約束から始まるものの、しかし主人公は年相応の力への過信やちっぽけな超越感を出しまくりな難のある人物であり、ヒロインをして「彼は最低の人間です」と言わしめる唯我独尊振りを発揮。しかしそんな彼にも数々の過酷な現実が降りかかり…
という少年の成長を描きながら、数々の魅力的なデザインのスーパーロボット同士の熱い戦いを見せ付けてくれる。(ロボットの見分けが何故か付きにくいが。)

しかし3巻以降、まるでストーリーがキャラに台詞を言わせているかのように主人公の、そして取り巻くキュラクターの言動がお約束の域を出なくなってしまう。ロボットバトル物に限らず、キャラが増えストーリーが加速し出すと良く陥る現象だ。つまり大抵の物語。


ロボットはかっこいい。ギミックもお約束ながら、良い。キャラクターもお約束の造詣ながら、良い。
でもそこまでかなという感がある。今後のどんでん返しに期待。


ちなみに作者のHPでは、ある意味この漫画以上に知名度が高いWeb漫画「Hybrid Incector」が楽しめる。仮面ライダーの”その後”を描いた作品であり、これも、熱い。


60点。


ヒャッコ 1巻 Flex Comix

ヒャッコ 1巻 Flex Comix

3巻まで読了。

男の子不在の学園ラブコメ の皮を被った日常系ギャグマンガ で片付けられない何か。それも強力な。

内気な少女、お嬢様、天然、ダウナー、委員長(?)、マッドサイエンティス子(造語)、パパラッ子(造語)などなどの数多くの人物が、思いのままに学園生活を送る物語。
そして何より主人公の虎子だ。ガサツで、考えるよりも先に手が出て、ノリが良く、しかし常識はずれではなく、他人思いで、いつも笑っているこの少女があらゆる人物をかき回し、そして彼女もかき回される。彼女の造詣は見事なもので、なかなか一言で言い表せない魅力を持つ。彼女に接した途端に、そのキャラクターの魅力が大きくなるという「周りを輝かせてくれる人間」というものを、直接作者が言及しなくても読んでいるうちに読者が自然と感じ取ることが出来る。

キャラクターに大きく重きが置かれた話は数あれど、ここまで一人一人が魅力的な物語もそうないだろう。どのキャラクターもボケ・突っ込みのどちらもこなしており、大人数であればあるほどその絡みが上手い。もっとそれぞれ個人の話が読みたい、と素直に思わせてくれる力は確かなもの。


ベタ褒め状態ではあるが、安易な記号の勝負をせず(絵柄の特徴かもしれないが)にこれだけ魅力的な少女たちを生き生きと描けるのは見事。
虎子は本当に可愛いぞ。


75点。

タビと道づれ 1 (BLADE COMICS)

タビと道づれ 1 (BLADE COMICS)

3巻まで読了。


淡いタッチで描かれる、淡い世界の淡い少女の物語。
帯に書いてあった天野こずえの言葉と絵に惹かれて買った。

現実から逃避をしてきた、人一倍気弱な少女が辿り着いた港町。この町は毎日同じ一日を繰り返し、町を縦横無尽に走る路地が街の外への道を拒む。その閉じた世界で起きる、起きるはずのない出会い……

一読して、水っぽい西瓜を食べている感触。ほんのりと甘い。が、どうにも物足りない。
二読して、梨を食べている感触。最初とは違う味がするが、やはり水っぽく物足りない。
どこが物足りないのかなぁ。こういう話は好きなはずなのだが。全くキャラクターたちに感情移入が出来ない。キャラクターの悩みや諭される言葉があまりにも若すぎるというかなんというか…。10年前に読んでいたら恐らく違う感想を抱いていたな、とは思う。

この世界はワンダーに満ちているが、それは地に足が付いていないワンダー。綺麗で透き通っているがそれ以上でも以下でもない、儚い少女の夢語り。そんな印象の物語。


50点。

Windows Vistaで物理メモリをRAMディスクにする/未管理のメモリを使う

32bitのOS(Windows XP X86(32bit版)やVista X86)では、通常4GB以上の物理メモリを使用することが出来ない。
どんなにメモリを積んでもOSでは4GBまでしか管理されず(マザボの種類によるが、BIOS上では積んだ分だけ管理される。)、さらに予約済みメモリ等の関係で実質3.25GB程度がシステム上使えるメモリの最大となる。(この差分を「天使の取り分」と呼ぶそうな)
実際、私のPCもメモリを4GB積んでいるが3.25GBまでしかシステムに認識されずに口惜しい思いをしていた。


しかしなんと、Gavotte Ramdiskというツールを用いることでその「天使の取り分」を有効活用することが出来るそうだ。
実現できる機能は二点。
・物理メモリをRAMディスクとして利用可能。
・さらに、OSが未管理部分の物理メモリまでもがRAMディスクとして利用可能


つまり、4GB-3.25GB=約768MBを超高速アクセス可能なディスクとして使える(!)というわけだ。

で、早速そのツールを試してみた。

結果は以下。
やり方は以下のサイトの詳しい解説が載っている。
http://d.hatena.ne.jp/p-4/20080511


これが、OS未管理部分の物理メモリを利用したRAMディスク。
4GB以上の物理メモリがあれば、その分だけの容量を確保可能。


管理部分のメモリを使用していないため、物理メモリの使用量は増えていない。




HDDベンチマークで計測したRAMディスクの速度。

read 159.3MB/s
write 147.4MB/s

正直、異常なレベルの読み込み/書き込みの早さ。あのSSDでさえランダム読み込みが100MB/sの速度(訂正。4kの計測では精々30~50)がいいところなのだから、この速さは驚異的。なんてこったい。
試しにIEのキャッシュをこのディスクに指定し、サイトを50ばかり同時に開き、再起動し改めて50ばかり同時に開くと…



さて、このマザーボードにはどの程度メモリが積めたかな…

「雲のむこう、約束の場所」「秒速5センチメートル」

待ちに待ったBD版の二作が発売されたので、買った。カリブの海賊以来の久々のBD。

新海 誠の作品は「ほしのこえ」「笑顔」やminoriのOP系はよく見ているが、初長編であるこの作品はノータッチだった。


一見して、そして最後まで圧倒され続けるのがその映像。新海と言えば背景だが、その緻密さとデフォルメ具合の妙は長編になっても色褪せない。90分超えの長編ということで「どこで静止しても一枚絵として見られる」レベルは、さすがに常に維持するのは難しいとは言え並み居るアニメ映画の中でも群を抜く。光の表現がこれほど上手いものはそうあるまい。
話は平凡。セカイ系の極みであった前作を幾分マイルドにし、世界情勢が横たわり、第三者の視点が登場し、SF的・ミリタリー的設定が散見されるようになった。その分尖った所がなくなってしまったわけで、そのいずれの要素も中途半端。SF者としては平行世界云々と塔の絡みは突っ込みどころ満載。逆に言うとある程度万人向きな作風になったということで、展開の「お約束」が約束されているわけで…そういった意味で長編としての安心感は見ていて感じた。勿論、どれだけどんでん返しがあるのかと期待をしたが…。多くの設定が隠されていると感じさせてくれる作品ではあるが、ではそれを探求するほどの訴求力があるかと言われれば難しいところ。塔の秘密を、せめてもう少し多く散りばめてくれれば……黙して語らぬ部分が多すぎるのでは、そもそも想像する材料がない。


”食い入るように見る”なんて言葉を実践したのはいつぞやぶりか。RDT261+PS3という再生環境で鑑賞する本作の映像は絶句の一言。常時20Mbps超のビットレートは、一度味わってしまうと二度とDVDを鑑賞できなくなる破壊力がある。いつかは慣れてしまう美しさかもしれないが、では今はその目新しい美しさを味わおう。見慣れた頃に、新海はまた新しい映像を見せてくれる。


ちなみに多少でも絵を描く者の視点で絵を見ると、スカーフや肌の主線の塗りが単調かつ均一過ぎ、緻密な周囲の小道具や背景とのミスマッチが目についた。しかしこれも高解像度ならではの贅沢な悩みだと思うと、途端に視界から消えた。


65点



秒速5センチメートル [Blu-ray]

秒速5センチメートル [Blu-ray]

新海 誠の連作短編。

  • 第一話「桜花抄」

唖然とする美しさ。緻密で細かいディテールではあるが、決して写実的ではないイラストの美。どこを切り取っても一枚絵として見られる。現実よりも美しい現実の光景、と言っても過言ではない。新海も行くところまで行ったかと感じさせるが、キャラが相変わらずで安心(?)した。さすがにマンパワーが足りないのか、絵の動きは大分「雲のむこう、約束の場所」よりも控えめ。作品性もあるのだろうが。
劇中、埼京線宇都宮線が出たところでは思わずニンマリとした。主人公が通ったルートがまさに、自分が数年間毎日乗り続けたコースだからだ。電車を待つとある一瞬のシーンで、電車のドアが開く位置とは違う場所にいる(電車に乗りなれていない)のを見たとき、やはり新海は只者ではないと感じた。宇都宮線に乗って「大宮を過ぎてしばらくすると、あっという間にビルは消え…」という独白がたまらない。新海の出身は長野だそうだが、あの雪の中の電車と主人公の光景は、もしかしたら原風景の一つなのかもしれない。

話は、特筆すべきところはない。叶わないことを予感させるラブストーリー。

  • 第二話「コスモナウト」

冒頭の遠くに月を望むシーンで絶句。近年見た映像作品の中で一番の衝撃を覚えた。神林長平の「猶予の月」のラストを彷彿とさせるシーンであり、本当に見たかった風景の一つだったと感じた。

三作の中では一番好きな物語。ハッピーエンドではないが登場人物が誰も彼もストレートで見ていて気持ちがいい。種子島の野原と風も素晴らしい。ロケットの打ち上げにも背筋が震えた。

「新海が一番描きたかったもの」と銘打っている話だが……これは厳しい。このような方向性に作風が変化していくのだとしたら、もう新海作品は物語としては見られないかもしれない。

この結末をハッピーエンドと感じるほどに俺はまだ年もとっていないし、物事も経験していない。この先ずっと感じられないかもしれないという一種の恐怖感を煽られる。これを「辛い終わり」以外にどう感じろというのか。そう開き直りたいくらいに、何かの試金石として使われているかのような結末だ。この映像と音は、恐ろしい破壊力の「後悔」という二文字の100tハンマーとなって眼前に迫ってくる。


どうでもいいが劇中、シネマディスプレイに向かってコーディングしている主人公の目が心配でたまらない。(初期型ならいいのだが)


75点。



両作品に共通して言えるのは、あまりにも映像のインパクトが強過ぎてまともな事を言えていないということだ。幸い何度も鑑賞に耐えうるような作品(前者は)なので、隅々までじっくりと見てその映像を…やはり映像か、を楽しみたい。
そう、この言葉も共通して言える。

”必見に値”