ユグドラ・ユニオン

通学中にちょこちょこやっていたのが終わったので、雑感。うさだblogっぽくいってみる。

  • 概要

GBA用のターンベースのファンタジー・タクティカルRPG。開発はSTINGリヴィエラというゲームで有名…らしい。

  • システム

タクティカルRPGというジャンルをうたっておりSRPGの印象が強いものの、システムはこのジャンルの草分け的存在であるファイアーエムブレムシリーズやラングリッサー他様々のそれとは大きく異なる。
マップは格子マップ(ヘックスマップなんて最近見ないが)。1マップが基本的に狭く、ユニットの移動できる場所は少ない。ほぼ一本道に近い。敵ユニットと隣接すると戦闘を仕掛けられるが各ターンに一度しか行えず、必然的にどのようにプレイしても戦闘が起こる場所や相手はあまり変わらない。攻撃ユニットは男だったら×、女だったら十字の形に上下左右のユニットと「ユニオン」を自動的に組み、それらのユニットも一緒に攻撃を仕掛けられる。同様に攻撃されるユニットもユニオンを組むので必然的に3,4人VS3,4人という戦闘が行われる。
ターン開始時に任意に選択した一枚のカードによって味方全体の移動力や使用スキル、相手ユニットHPに与えるダメージなどが『全て』決まるのが特徴的。

戦闘はスペクトラルフォースシリーズのような自動進行型。1VS1の戦闘で、それぞれのユニットは5体程度の部下を率いている。自動的に戦闘が行われ、プレイヤーはユニットに「Aggressive(攻撃的・スキルゲージが減るがダメージアップ)」か「Passive(消極的・スキルゲージが回復していくがダメージダウン)」の指示を出すことが出来る。スキルゲージがたまることによって任意にスキルを発動させることが可能。カードは戦闘で勝てば勝つほど強くなっていき、その種類も豊富。その発動条件や能力も様々。

ゲームそのものは戦闘マップ→戦闘マップを繰り返すオーソドックスなもの。


プレイして直に気が付くことは、驚くほど自由度が低いということであろう。味方ユニットは非常に少なく、序盤で2ユニット。後半に行っても5,6ユニットの同時出撃がいいところであるので、必然的に使用ユニットは限られるし、育成するユニットも限定される。
マップが極めて狭く、また移動可能箇所、移動範囲も少ないため戦闘を行う場所をあまり選べない。剣・斧・槍のおなじみの三すくみの補正が序盤から中盤にかけては非常にきついため、戦闘に勝利するために戦う相手も固定されがち。また、普通にプレイする分には強くなるユニットというのが完全に決まっており、そのユニットだけを使っていればほとんどのマップが難なく無工夫でクリア出来てしまう。特に後半に行くにしたがってその傾向は顕著に表れ、たった2ユニット(場合によっては1ユニット)で敵を次々なぎ倒していく姿は、プレイヤーの自由意志の介入の余地の無さを表しているようで少々悲しい。カード(スキル)も性能に差が大きく、いくつかの強力なカードを除いて後は十把一絡げ。様々に趣向は凝らしているのだが、もたらす結果が似たようなものなので結果として普通にプレイする分にはあまり意味の無いものとなっている。一応装備品というものもあるが、使用回数(装備できるマップ回数)が決まっており、また数もそれほど多くないためにあまり活きているシステムとは思えない。
ある程度ゲームになれた人間ならば全体的に惰性でプレイ出来る程度であり、精々ユニオンをどのように組むかにほんのわずかに工夫がいる程度。戦略レベルの話では『戦略シミュレーション』と呼ぶにはいささか難がある。そこらの平均的なRPGよりも、よほど自由度が低い。

では戦術レベルは……という話になるが、戦闘もその長さの割にはプレイヤーに出来ることは「積極的/消極的」の切り替えやスキルの発動程度であり、ここでも物足りなさを感じてしまう。シミュレーションゲームをやっていて眠くなったのは初めてかもしれない。とにかく暇な場面の多いゲームだ。


全体的に「やらされている感」が非常に強く漂っているのは否めない。1マップの敵・味方ユニットの圧倒的な少なさ。戦略の幅を広げるはずの三すくみが、かえって戦うユニットをさらに減らすという逆効果。眺めているだけの戦闘。ころころ変わる戦闘目的。プレイヤーの意思というものが、あまりゲームに伝わらない。難易度も高いというよりは理不尽さのほうが大きい。
ユニットの育成を楽しむというSRPGRPGたる所以も、1:キャラクター数がそもそも少ない。2:強さにあまりにも差がある。3:ユニオンで全ユニットまとめて戦闘というパターンを半強要される(組まないとどう足掻いていも勝てない/組んだら勝てるというシチュエーション)ことが多いので結果として育成に差別化が出来ない。などの点により面白さは今ひとつ。
STING初のSRPGということを差し引いても、斬新というよりは中途半端と呼ぶのが相応しいシステムではないか。


どこをどうすれば面白くなったのかは難しい。少数ユニットもマップの小ささも戦闘回数の少なさも全てカードシステムに起因するところが大きいのだが、カードシステムそのものが根幹となっているだけに代案が思いつきにくい。戦闘の比重が大きいので、せめて戦闘にもっとプレイヤーが介入することができれば……

システムとは逆に、こちらは非常に精練されている。
ゲーム全体に渡って数多くの種類とサイズのフォントが使われており、一枚絵とドットキャラクターが織り成す戦闘前イベント/キャラクター同士の会話等における芸の細かさは一見の価値あり。戦う相手によって戦闘中のセリフが代わるのはかゆいところに手が届く演出。
戦闘準備→戦闘開始→ユニット突撃→反撃のシークェンスの流れるような演出は特筆すべきものがあり、このゲーム最大の見所。所狭しとアイコンと数字がぎっちり詰め込まれている戦闘場面も派手であり多くの情報が無理なく詰め込まれている。ドット絵の出来は可愛い系統として十二分に満足出来るレベルであり、そのユニットたちがしっかりと動いてくれるのは見ているだけで楽しい。スキルエフェクトも派手で、その演出にはセンスを感じる。
一枚絵はきゆづきさとこ氏が全て書き下ろしているが、大きな瞳と意図的なバランスの悪い顔パーツ(つまり可愛い系)のせいで好みがはっきりと分かれるところ。メリハリのついたキャラクターばかりなので、演出には実にマッチしている。ちなみに沐浴は見ていない。


音楽も逸品なものが多い。戦略ゲームというだけあってほとんどの曲がややアグレッシブなゲームミュージックなのだが、場面にマッチした選曲ばかり。キャラクターごとに用意されている戦闘の音楽もテンポがよく、耳に残りやすい。個人的には演出効果もプラスされて「帝国軍出撃!名将クラス」がベスト。次点が「ガルカーサ猛攻」。ゲームらしいゲームミュージックというものを久々に味わえた。


この点に関してはGBAでよくぞここまで、と唸るほど演出の品質は高い。


基本的に言うことは無いのだが、二点。

スキルのエフェクトは決して冗長ではないのだが、短時間で何度も何度も見せられるとつらいものがある。ただでさえ使用価値が薄いスキルは、そのせいでますます使いにくくなってしまった。スキップは是非つけて欲しかったところ。…なのだが、一回一回の戦闘の比重を考えてあえてスキップ機能は無くした節もあるのでなんとも。
また、基本的に簡略化されたキャラのアイコンがちまちま動くだけの戦闘マップの演出が、その他に比べてやや寂しいところではあった。マップ背景自体もどうせならきちんと作りこんで欲しいところ。一枚絵の引き伸ばしはつらい。

  • ストーリー

この手のゲームにおいてストーリーというものは 1:ゲームの対象層 2:システムそのものへの関連度 によっていくらでも比重や評価が変わるので基本的に「面白い」か「面白くない」かの主観的判断で済ませていいと思うのだが、それでも気になることはある。
とにかくキャラクターの個性が弱い。まるでストーリーの上にキャラクターが乗せられているかのように、キャラが自分の言葉を喋っていない。そもそも最初から設定されている設定がストーリー中に破綻しかけているキャラなどを見ると、辛くなる。ほとんどのシチュエーションでキャラクターの喋る言葉は予測可能であり、斬新さは欠片も無い……のは中盤までで、後半は悪い意味で斬新さがある。エンディングの素っ気無さも極端。

  • 不可解な点

ゲームとして、理解に苦しむ点がいくつかある。
1:戦闘に出ていないメンバーの装備も消耗する/ドーピングアイテムの使用方法が『装備』/装備をはずせない。
デザインとか、システムなどの以前の問題としてこれは不可解。テストプレイをすれば一発で気が付くようなものだが。まさか何か意味があるのだろうか、これには。
2:プロテクト(イベント上、絶対に死なない状態)がかかっている敵が、戦闘で致命傷を与えるまで分からない。
本当に分かりにくい。これのおかげで理不尽な損害を受けたり、カードの残り枚数計算が狂うなどの数少ない戦略の余地がますます無くなる。
3:必須イベントの発生条件が分かりにくい。
次の敵が現れたり、次の道が開けたりするなどのイベントの発生条件がわかりにくく、カードの枯渇が酷い。長い長い戦闘シーンも相まって、激戦が終わった後に特定タイルへの移動が出来ずカードが無くなりゲームオーバーなどといった理不尽すぎて怒りが湧いてくる状況も多々。事前に攻略情報を得ることは必須なのか。
4:キャラクターの全身絵が全員分揃っていない。
意外と致命的なのは、主人公のユグドラ、ミラノを除いて味方キャラクターの全身絵が全て汎用ユニットイラストだということ。赤髪なのに青髪のイラストで表示されるニーチェを見たときは茶を吹いた。キャラクターデザインに漫画家を起用するほどキャラクターを重視する(ように見える)このゲームで、どうしてこの部分で手を抜くのかが…分からない。

  • 全体

とにかく調整不足・中途半端な感は否めない。戦略ゲームとしての面白さを追求するには厳しいが、それでも少々いじるだけでまともに戦略を練る楽しさを得られるレベルにもってこれることは出来たはずだ。RPGとしても、育成の楽しみが希薄。テストプレイの余裕の無さをまじまじと感じる。ストーリー自体もかなり苦しい。
演出や音楽が非常に高いレベルで安定しているだけに、惜しい。色々な意味でも次回作以降は注目。タクティカルRPGの真髄を是非見てみたい。
一言で表すと「もっと操作させろ」ということになり、戦略シミュレーション好き……特にファイアーエムブレムを好むような人には決してお勧めできないが、いわゆる家庭用RPG好きならば……楽しめるかもしれない。

今までにはないゲーム、という意味では一定の評価とプレイ感触を得られるとは思われる。

  • 総括

暴君と魔人



50点。