ニューロマンサー -ウィリアム・ギブスン

ニューロマンサー (ハヤカワ文庫SF)

ニューロマンサー (ハヤカワ文庫SF)

80年代の傑作SFにしてサイバーパンクの金字塔的作品。あの「マトリックス」も、「攻殻機動隊」もその他多くのサイバーパンク作品に多大な影響を与えた一作。

なのだが……



結論から言うと、どうにも楽しめなかった。読むのが苦行だったと言ってもいい。おかしいな、今まで”傑作”と名高いどころのハードSF作品で、少なくとも苦痛となるようなものは一つもなかったのだが。いや、「地球の長い午後」の後半か…。


苦しかった。登場人物が何を考えているのかさっぱり掴めない。ただ、流れを眼で追っているだけ。文章が読みにくいというのがその原因だと感じる。多分。原文は読んだことないが、どこをどう訳せばこのような読みにくい日本語になるのか首を傾げる。原文がスラングだらけでなかなか日本語にしにくかったというのは予想がつくが、それにしても読みにくい。不思議だ。何度も何度も出てくる主人公の「〜〜〜なのかい……」という言葉が一体どんな格好で、どんな声で、どんな感情で言っているのか最後まで分からなかったのが悔しい。あまりにも独特過ぎる文体。これは人を選ぶ。俺は……だめだ。


サイバーパンクチックな描写があっても、悲しいかな空寒いほど「あーあるある」という食傷しきった感想しか出てこないあたりどうなのだろう。


古典SFの宿命とも言える「イェスタディズ・トゥモロウ」*1が情報通信関係だったのがさらに辛いところ。1区画でMB単位の転送量と言われてもあまりの現実の技術とのギャップに苦しくなる。


wintermuteなんかの単語はなかなか新鮮に感じられてよかった。


というわけでなんとも気まずい読後感。どっかで読んだことあるような文体だと思ったら「マルドゥック・スクランブル」を3倍小難しくした感じだと気がついた。

*1:例えば1950年に書かれた小説の中で、1970年を未来として描くこと。往々にして現実の未来とはかけ離れたものとなっている。