敵は海賊・正義の眼  神林長平

敵は海賊・正義の眼 (ハヤカワ文庫JA)

敵は海賊・正義の眼 (ハヤカワ文庫JA)

ついに出た。
10年ぶりの新作。
(ややネタばれ)

ありのままに起こったことを書き記すぜ。出た、買った、と思ったらもう読み終わっていた。な、何を言っているか分からねーと思うが以下感想。


だめだ! 読み足りん! もっと読ませろっ!
圧倒的にページ数が足りない。折角話の下敷きが大きくて、どんな展開が待ち受けているのかと思いきや…ラテルチーム登場後の駆け足はちょっと急ぎ過ぎている。あれ、海賊課の存在意義が揺らぐって? 女王って? 海賊課志望の新人の行方は? くぁ、物足りん!


軽快なテンポのラテル、黒ネコ型宇宙人アプロ、思考戦艦ラジェンドラの掛け合いは健在。セレスタンもすっかりレギュラー化したのか、今回もずっと登場している。ただ、完全にラテルのお株を奪っているような……今後、ラテルがただのツッコミ役&保護者役になるのは避けてほしいところ。


何より嬉しかったのは、最近の作者の傾向である「ひたすらキャラ同士が論理的舌戦を繰り広げて、行動は僅か」という思弁的な作風が、今回はあまり目立たなかったということ。まだまだ作者にもこのようなテンポの作品が書けるのだと思うと嬉しくなる。
最も、やはり全体的に落ち着いた感じ…悪く言えば暗いイメージが(今までの海賊シリーズと比べると)漂っていた感は否めない。あまりにも能天気なキャラはもう動かしにくいのかな、作者。
その分キャラの思考のさせ方はますます洗練されていて、特にリジーのキャラ作りは素晴らしい。


しかしとにもかくにもページが足りない。せめて後100ページあれば……。
10年待ってこの分量…という風に、やや物足りないのは確か。それでもラテルに、ラジェンドラに、そしてアプロに久しぶりに出会えた喜びには代えがたい。
ええぃ、次はまだか!



65点。